2025年09月24日

「ビジネス実務法務検定」は意味がない?役に立つ?取得のメリットを徹底解説

近年、SNSが発達したこともあり、企業の不祥事には厳しい目が向けられるようになりました。
一社員の起こした問題であっても、企業のイメージダウンや経営不振につながることは珍しくありません。
そのため、コンプライアンスに関する知識を身につけた人材を求める企業が増えてきています。

ビジネス実務法務検定はその名の通り、ビジネスコンプライアンスの知識が身につく検定であり、様々な職種や業種で取得が推奨されています。
本記事では、ビジネス実務法務検定の概要を紹介するとともに、取得しても意味がないと言われる理由取得するメリットなどを解説します。

ビジネス実務法務検定とは

東京商工会議所が主催しているビジネス実務法務検定は、ビジネスに欠かせないコンプライアンス・法令遵守能力の基礎となる実践的な法律知識を効率良く身につけられる検定です。
ビジネス実務法務検定は、業種を問わず企業活動の主要分野を多くカバーしており、取得することで仕事の質を高められることに魅力があります。
受験者はキャリアアップを考えている社会人が多く、建設業やサービス業など、受験者の業種も様々です。

基本的に毎年7月と12月の年2回試験が実施されていますが、1級は12月しか受けることができません。
受験に際して特別な制限はありませんので、2級から受けることも、2級と3級を併願受験することも可能です。
ただし、1級は2級合格者しか受験できないので注意しましょう。

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なぜ「ビジネス実務法務検定は意味がない」と言われるのか

ビジネス実務法務検定は、取得しても意味がないという声も聞かれます。その理由は次の3つです。

独占業務がない

ビジネス実務法務検定には独占業務がないため、取得する意味がないと言われることがあります。

ビジネス実務法務検定は国家資格ではなく、あくまでも民間の検定試験です。取得したことで何か特別な仕事ができるわけではありません。
たとえば弁護士や司法書士、行政書士、宅地建物取引士などは、その資格を持っていないとできない独占業務があります。

独占業務があれば独立開業することも可能ですが、ビジネス実務法務検定を取得したことのみを理由に、士業事務所を開業することはできません。
法律のプロを目指す方にとっては入門編となる検定であり、「一定以上の法律の知識を有している」という位置づけに過ぎないため、取得しても意味がないと考える方がいます。

知名度が低い

ビジネス実務法務検定は毎年2~3万人が受験する検定なので、数ある検定試験の中では比較的メジャーな部類に分けられます。
しかし、日商簿記検定などに比べて一般的な知名度は決して高いとは言えません

すべての職種や業種で評価されるとは言えず、転職市場において評価されない場合があるのも事実です。
そのため、履歴書に記入しても採用担当者が資格の内容を知らない可能性や、知っていたとしてもあまり評価されない可能性があります。
実際のところ、経理や会計部門への転職を考えているなら日商簿記検定、不動産業界への転職を考えているなら宅地建物取引士を取得したほうが大きくアピールできます。

活用の幅が狭い

法務以外に活用の幅がないことを理由に、意味がないと言う人もいます。
ビジネス実務法務検定の知識は、主に法務や法律知識が必要な場面に活かせるものであるため、得た知識を直接的に活かせる職場は限られています。

知識を活かしやすい職種や業界として、たとえば建設や製造業の管理業務や、金融・保険業、事業会社の法務などが挙げられます。
建設や製造業界では事故などのリスクを事前に回避する必要があるため、ビジネス実務法務検定の取得を推奨しており、多くの受験者がいます。

金融・保険業や事業会社の法務では、必要な経験・能力のひとつにビジネス実務法務検定を取り入れ、取得を必須要件にしている企業があります。
このような企業や部署であれば、検定の取得が業務に直結しますが、すべての職場で業務に直結するわけではありません。

本来、ビジネス実務法務検定は様々な業種や職種で役に立つ検定です。 しかし、作業効率や営業効率を上げたい、即戦力としてすぐに成果を出したいという方は、取得してもメリットを感じられない可能性があります。

法務のキャリアアップ支援を受ける

ビジネス実務法務検定を取得するメリットは?

上記のような理由から、ビジネス実務法務検定は取得しても意味がないと言われる場合もありますが、実際には取得して損はありません。それを裏付ける3つのメリットを紹介します。

実践的な法務知識が身につく

ビジネス実務法務検定の取得にあたっては、民法、商法、会社法、独占禁止法、消費者契約法、個人情報保護法など、様々な法律の基礎知識を身につけられます。
公式テキストには、実際のビジネスシーンで役に立つ内容がまとめられているため、実務に即した法務知識を効率良く学べます。

営業、総務、人事、経理など幅広い職種で必要とされる実践的な法務知識を習得できるため、実務能力の向上に効果的です。
たとえば、事務職の方は社内で法務部とやりとりする際や法関連書類を作成する際などに役立ちます。
営業部の方は秘密保持契約書や取引基本契約書など、売買取引をする上で必要となる書類の内容を正しく理解できるようになるはずです。 人事部の方は労働基準法や個人情報の取り扱いに関する基礎知識を実務に活かせます。

また、ビジネスのあらゆる場面において自信を持って物事を判断できるようにもなります。
たとえば、営業職の方が法務部に確認しなくても契約書の不備や不利益を正しく判断できるようになったり、管理職の方が労働基準法の知識を習得することで雇用に関するトラブルを未然に防げるようになったりします。
ほかにも、検定によって知識を身につけることで、法務部や弁護士との連携がスムーズに行えるようになるというメリットもあります。

キャリアアップ・就職・転職でアピール材料になる

ビジネス実務法務検定を取得すると、あらゆる業種で必要とされる法律の知識が身につき、実務にも活かせるため、結果的に仕事の質が高まりキャリアアップにつながります。
社内で信頼されるビジネスパートナーになりたい、重宝される人材になりたいという方は、特に大きなメリットを感じられます。

企業によっては高く評価され、就職・転職時のアピール材料になることもメリットです。
検定自体の一般的な知名度は低いとはいえ、就職・転職で評価する企業は増加傾向にあり、検定の保有を昇進や昇給の条件にしている企業や部署も少なくありません。
社内資格制度にビジネス実務法務試験を取り入れている大手企業も存在します。

「MS Agent」を経由して法務への転職を決定された方の資格所持率

上の図は、2023年にMS-Japanがの転職エージェントサービスを経由して法務への転職を決定された方の資格所持率のグラフです。
全体の35.6%が法務関連の資格を所持しており、資格所持者の65.9%がビジネス実務法務検定を所持していることが分かります。

特に、コンプライアンスを重んじる企業には、法務の知識を有している人、法律に詳しい人というプラスの印象を持ってもらえるため、重宝される傾向にあります。
企業組織の仕組み、契約関係、財産の権利関係などに詳しいことを面接でアピールしましょう。
検定の取得によって得た知識を業務に活かせるだけでなく、企業ルールを遵守する姿勢や規律性なども身につくため、それらをアピールすることもできます。

法務関連の上位資格の足掛かりになる

ゆくゆくは法律関連の仕事がしたいという方にとって、ビジネス実務法務検定は取得しておいて損のない検定です。
勉強してきたことが関連する資格取得のステップアップになることは間違いありません。

ビジネス実務法務検定の試験問題は、民法、商法をはじめ、労働法、著作権法などビジネスに関連する様々な法律をもとに出題されます。
出題範囲は、司法書士、行政書士、弁理士など法律系の上位資格の試験内容と重複している部分があります。

そのため、今後法律のプロフェッショナルを目指して上位資格を取得したいと考えているなら、ビジネス実務法務検定の取得において勉強してきたことが活かされます。
宅地建物取引士、中小企業診断士などの試験内容とも重複している部分もあるため、併せて受験を検討してみるのもよいでしょう。
ビジネス実務法務検定に加えてこれらの資格を取得すれば、現職で活用できるのはもちろん、転職する際にも多様な選択肢の中から転職先を選べるようになります。

また、司法書士や行政書士など上位資格には独占業務があり、独立開業することもできるため、有資格者になればより仕事の幅が広がります。

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ビジネス実務法務検定の受験者属性とは

ビジネス実務法務検定は誰でも受験できますが、級によって求められるスキルが異なります。
対象は、3級が社会人全般及び学生、2級がビジネスパーソン及び管理職・管理職候補、1級は法務部門の責任者とされています。

主催する東京商工会議所によると、級ごとの基準は以下の通りです。

  • ・3級:ビジネスパーソンとしての基礎的法律知識を有し、問題点を発見できる
  • ・2級:企業活動の実務経験があり、弁護士などの専門家にも対応できる法律の実務知識を有している
  • ・1級:ビジネス全般に必要な法務知識を持ち、その知識に基づき多面的な観点から高度な対応や判断ができる

では、実際にどのような方が受験しているのか、東京商工会議所が公開しているデータを参考に、2級・3級の受験者の業種・職種を紹介します。

受験者の業種

【2級】

業種 割合
建設業 16.6%
情報通信・ソフトウェア 14.0%
金融・保険業 13.4%
製造業 12.9%
サービス業 9.7%
卸売業 4.8%
不動産業 4.6%
学生 3.6%
小売業 3.2%
その他 17.2%

【3級】

業種 割合
情報通信・ソフトウェア 14.2%
製造業 13.5%
卸売業 11.1%
サービス業 10.6%
金融・保険業 10.1%
建設業 8.2%
学生 8.0%
不動産業 4.4%
小売業 4.0%
その他 15.9%

※参照元:ビジネス実務法務検定試験®とは|東京商工会議所

2級と3級のいずれも、様々な業界から受験者が集まっていることがわかります。特に多い業種を見てみると、2級受験者では建設業が16.6%を占めています。
次が情報通信・ソフトウェアの14.0%、金融・保険業の13.4%と続きます。3級受験者の業種でもっとも多いのは情報通信・ソフトウェアの14.2%、次が製造業の13.5%、金融・保険業の11.1%です。
したがって、これらの業界でのキャリアアップや転職を考えている場合には、ビジネス実務法務検定の取得が効果的なアピールになる可能性があります。

また、社会人の受験者が大半を占めますが、3級は学生も受験しています。
入社後一定期間以内に、新入社員に3級の取得を求める企業もあるため、学生のうちに取得を目指すのもおすすめです。

受験者の職種

【2級】

職種 割合
営業・販売部門 21.1%
事務部門 20.1%
総務・人事部門 13.8%
法務部門 13.7%
経営・企画部門 7.6%
財務・会計部門 6.2%
システム部門 4.2%
その他職種 13.3%

【3級】

職種 割合
営業・販売部門 33.9%
事務部門 17.9%
総務・人事部門 10.7%
法務部門 5.6%
システム部門 5.3%
経営・企画部門 4.7%
財務・会計部門 4.7%
その他職種 17.3%

※参照元:ビジネス実務法務検定試験®とは|東京商工会議所

受験者の職種に関するデータからは、法務部門に限らず、あらゆる職種で需要があることがうかがえます。
中でも営業・販売部門、事務部門、総務・人事部門の受験者比率が高く、法務部門よりも高い割合です。2級受験者では営業・販売部門がもっとも多く、21.1%を占めています。
次に多いのが事務部門の20.1%、総務・人事部門の13.8%です。

3級受験者の職種では営業・販売部門が33.8%ともっとも多く、事務部門の17.9%、総務・人事部門の10.7%を上回っています。

法務のキャリアアップ支援を受ける

転職で役に立つのは「2級」以上!

ビジネス実務法務検定には1級、2級、3級とありますが、転職で有利になるのは2級以上です。
3級は学生の受験者も多く合格率も高いため、就職では評価される可能性があるものの、転職で役に立つとは言い難い面があります。

3級に比べると2級の合格率は下がりますが、難易度はやや難しいとされるレベルであり、努力すれば合格できる可能性は十分にあります。
東京商工会議所が公開しているデータを参考に、2024年の合格率を紹介します。

2024年のビジネス実務法務検定の合格率

シーズン
試験回
受験者数(人) 実受験者数(人) 合格者数(人) 合格率
第55回 2級 6,383 5,454 1,828 33.5%
3級 9,227 8,285 3,348 40.4%
第56回 1級 587 445 74 16.6%
2級 7,695 6,586 2,759 41.9%
3級 10,358 9,338 4,321 46.3%
2024年度 1級 587 445 74 16.6%
2級 14,078 12,040 4,587 38.1%
3級 19,585 17,623 7,669 43.5%

※参照元:ビジネス実務法務検定試験®とは|東京商工会議所

2024年の1級の受験者数は587人、実受験者数は445人、合格者数74人、合格率は16.6%でした。
年度によって合格率には差がありますが、1級は1桁台の年度もある難関なので、相応の勉強時間を確保する必要があります。

独学での合格可能性

2級までは公式テキストなどを使って独学での合格を目指せますが、1級は難易度が高いため、独学よりも通信講座や資格の学校などを利用したほうが効率的です。
2級までは回答形式が多肢択一式ですが、1級は論述となることもあり、2級に比べて合格率は大幅に下がります。
なお、1級の不合格者の得点上位者は準1級に認定されます。

勉強時間の目安

勉強時間の目安は、3級が40~60時間、2級が60~90時間以上、1級が200~250時間です。確実に合格したい方は3級から挑戦するのがおすすめですが、いきなり2級を受験することもできます。
たとえば日商簿記検定の場合、簿記という特殊な知識をゼロから習得するため、経理実務経験のない初学の方は、3級から始めてしっかり基礎を身につけてから2級に挑戦するほうがかえって効率的です。
一方、ビジネス実務法務検定においては、社会人としての一般的な教養という意味ですでに一定の法律知識を備えている方は多くいるため、2級からの勉強でも問題ありません。
2級の勉強時間の目安は60~90時間なので、1日1時間程度の勉強時間でも、3カ月ほどで取得を目指せます。2級を保有していれば転職で少なからずアピールでき、役に立ちます。

なお、弊社MS-Japanは法務をはじめとする管理部門と士業に特化した転職エージェントです。
「MS-Japan」で取り扱っている求人においても、「ビジネス実務法務検定2級以上」を歓迎要件としている求人が多くあります。

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ビジネス実務法務検定の資格を活かせる求人例

ビジネス実務法務検定の資格を活かせる求人例

ここでは、「MS-Japan」で取り扱っている求人の内、ビジネス実務法務検定を歓迎要件としている求人をご紹介します。

国内外に展開するメーカーから人事・総務・法務の求人

仕事内容
人事、総務、法務業務全般に携わって頂きます。
・勤怠管理・給与計算
・住民税・所得税算定
・社会保険手続き
・採用業務
・福利厚生業務
・文書管理、ファシリティ管理、資産管理
・法務業務
必要な経験・能力
<必須>
・事業会社で人事総務や法務の実務経験のある方
・車の運転ができる方(普通免許AT限定可)
<歓迎>
・ビジネス実務法務検定3級保有等の法務関連の知識がある方
想定年収
300万円 ~ 450万円

大手上場子会社のゼネコンから人事総務求人

仕事内容
・総務:行事イベント・式典運営・IT関連業務・ファシリティ関連・予算管理 等
・人事:人材採用・社宅管理・給与関連業務 等
必要な経験・能力
<必須>
・総務もしくは人事の実務経験
<歓迎>
・様々な経験を積んで将来は幹部社員として働きたい方
・衛生管理者
・ビジネス実務法務検定2級
想定年収
550万円 ~ 680万円

ゲーム会社から法務知財担当(将来のマネージャー候補)の求人

仕事内容
・業務委託契約、ライセンス契約などの契約書作成・修正・審査・交渉(英文契約あり)
・各種規約の作成及び改訂
・社内法務相談、調査、論点整理、当社顧問弁護士との連携
・社内マニュアル作成、社内説明会の実施など、法務知識の啓蒙とノウハウの共有
・当社の事業に関連する法令への対応業務 等
必要な経験・能力
<必須>
・企業もしくは組織内で法務関連業務の経験(3年以上)
・大卒程度の英文読解能力
<歓迎>
・ゲーム、エンタメ、IT、メーカーなどでの勤務経験
・弁護士資格
・ビジネス実務法務検定
・ビジネスレベルの英語力 等
想定年収
600万円 ~ 800万円

まとめ

コンプライアンスの重要性は、以前にも増して高まっています。それに伴い、ビジネス実務法務検定の保有を評価する企業は増加傾向にあります。
ビジネス実務法務検定は、社会人に必要な実践的な法務知識を身につけられ、リスク回避やキャリアアップにも役立つ有益な検定です。

独占業務がない、知名度が低いなどの理由から、取得する意味がないという意見も散見されますが、実際に取得によって得られるメリットは多くあります。
様々な職種や業種で実務をこなす上で役に立つのはもちろん、転職時のアピール材料や上位資格の足掛かりになります。
挑戦するなら、転職市場で評価されやすく求人数も多い2級以上の取得を目指しましょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

柴 優太朗

大学卒業後、現職(MS-Japan)へ入社。
入社後は、RA(リクルーティングアドバイザー)として100社以上を担当し、業界問わずスタッフクラス~管理職クラスまで幅広い中途採用支援に従事。
異動の機会をいただき、2021年4月からCA(キャリアアドバイザー)として、管理部門及び士業領域幅広い方の転職支援に従事しています。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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