公認会計士のキャリア/国際税務を理解する30代はなぜ強い?転職市場で評価されるスキルを解説(後編)
この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
<前編の要約>
公認会計士が国際税務の領域でどのような役割を担い、監査経験をどのように活かせるのかを解説しました。
特に、移転価格やBEPS対応といった国際税務の現場では、会計知識に加えてロジカルライティング力や英語力、社内外の調整力が求められることを紹介しました。
引き続き後編では、国際税務経験を持つ会計士が転職市場でどのように評価されるのか、そして職務経歴書や面接での具体的なアピール方法について詳しく解説します。
転職市場での評価ポイント
国際税務の経験を持つ会計士は、その希少性から転職市場で極めて高い評価を受けます。
特に製薬、IT、総合商社、大手メーカーといったグローバル展開が著しい業界からの求人は豊富です。
年収面でも、監査法人から事業会社へ転職し、約100~150万円の年収アップを実現するケースは珍しくありません。
また、転職先の選択肢はBig4税理士法人や大手企業に限りません。
例えば、中堅税理士法人の国際部門は未経験者を育成する風土が根付いている場合が多く、ワークライフバランスを重視する方にも魅力的です。
海外展開を始めたばかりの成長企業で、仕組みをゼロから構築する経験も非常に価値があります。
ただし、年齢によって期待値が異なる点には注意が必要です。
30代前半は「ポテンシャル」が重視され、吸収力や意欲が高く評価される一方、30代後半になると「即戦力」として、英語での実務経験や税務に関する基礎知識が求められる傾向が強まります。
職務経歴書・面接でのアピール方法
国際税務の選考を突破するには、経験を戦略的に伝える工夫が不可欠です。
職務経歴書では、抽象的な表現を避け、具体的な成果を数字や固有名詞で示しましょう。
(例)
・悪い例「移転価格の文書化対応に従事」
・良い例「OECDガイドライン改訂に伴い、日・米・中3拠点の移転価格文書を英語で作成。各拠点CFOとの調整をリード」
このように書くことで、あなたの介在価値が採用担当者に明確に伝わります。
面接では、受け身の姿勢は禁物です。「学びたいです」という意欲だけでなく、監査経験をどう活かせるかを具体的に語る必要があります。
また、面接の最後に行う「逆質問」は、絶好のアピール機会です。
「御社の国際税務方針を策定する際、海外拠点との意思決定プロセスで課題となる点はどこですか?」といった質問は、当事者意識の高さと実務への深い理解を示すことができます。
「監査経験があるので大丈夫」という過信は捨て、税務領域へのリスペクトと貢献意欲を具体的に示すことが成功の鍵です。
まとめ|国際税務経験はキャリアの希少性を高める
公認会計士としてのキャリアに「国際税務」という専門性を加えることは、あなたの市場価値を飛躍的に高めるための、最も確実な投資の一つです。
監査法人でキャリアをスタートした30代前半の方が、まずは育成環境の整った税理士法人で専門性を磨き、数年後に日系グローバルメーカーの税務チームに転職して海外M&A案件をリードするといった転職成功事例は、決して特別なものではありません。
国際税務の経験を積んだ先には、グローバル展開する大手企業の経理・財務・税務の部長やCFO、コンサルティングファームのパートナー、あるいは国際税務の専門家として独立開業するなど、多様で魅力的なキャリアパスが広がっています。
実務能力とポテンシャルの両面が評価される30代のうちにこの領域へ挑戦することは、他者との明確な差別化要因となり、40代以降のキャリアをより豊かで強固なものにするでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

早稲田大学卒業後、在学中のアルバイト経験から塾業界へ進み、教室長として教室統括・運営に従事。
2020年にMS-Japanにキャリアアドバイザーとして入社し、人事総務・社労士領域を中心とした求職者支援に携わる。
その後、事業会社の法人担当(リクルーティングアドバイザー)としての幅広い管理部門職種の採用支援・転職支援経験を経て、現在は士業領域において、法人・個人両面での転職を支援している。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

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