2024年01月29日

公認会計士の実務補習とは?スケジュールと補習所一覧

公認会計士になるためには、公認会計士試験に合格するだけでなく、実務補習実務経験を経なければなりません。
実際に公認会計士試験を受けていて、そろそろ合格できそうな人にとっては実務補習がどのようなものか気になるところでしょう。
この記事では、公認会計士の実務補習にフォーカスし、講義内容やスケジュール、補習所一覧、修了要件なども含めて解説します。
公認会計士を目指す上での参考になれば幸いです。

公認会計士の「実務補習」とは

公認会計士を目指している人は、公認会計士試験に合格しても、まだ公認会計士になることはできません。
公認会計士として正式に登録するためには、公認会計士試験に合格後、3年間の「実務補習」3年以上の「実務経験」が必要です。

実務補習とは、公認会計士試験合格者が受講する実務研修を指します。
修業年限の3年間のうちに、公認会計士としての知識を深める講義を受け、必要な単位を取得しなければなりません。
講義は1週間に1〜2回の頻度で行われ、主に平日夜間や週末に開催されます。
単位は、テストやレポート、ディスカッションなどを通じて獲得していきます。
多くの場合、公認会計士試験合格後に監査法人などで働きながら補習を受けることが一般的です。

一方、実務経験には、業務補助と実務従事があります。
業務補助とは、公認会計士または監査法人での監査証明業務を補助することです。
実務従事とは、一般企業や金融機関などで、財務に関する監査・分析などの実務に従事することです。
業務補助では週の勤務日数に規定はありませんが、実務従事の場合は常勤で3年が基準となります。
実務経験の期間は公認会計士試験の合格後が通例ですが、合格前から携わることも可能です。

「実務補習」と「実務経験」は、公認会計士としての専門知識やスキルを高め、実務での実践力を養う重要な段階です。
これらのプロセスを経て、公認会計士としての登録に向けた準備を整えることができます。


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実務補習の講義内容

実務補習の講義は、教科として会計、監査、税務、経営・IT、法規に分類され、それぞれの理論および実務を学びます。
講義内容の概要は以下のとおりです。

会計教科

決算実務や開示、連結財務諸表の作成、IFRS(国際財務報告基準)などを深く理解するための講義です。
ここでは税金や税効果、業務フローに関する内容も含まれます。

監査教科

不正事例の研究や分析的手続、国際監査基準など、監査に関連する幅広い内容を学びます。
監査手続や保証業務についても実践的な知識を習得します。

税務教科

法人税法、所得税法、租税特別措置法のほか、資産課税や消費税の実務、国際税制など、税務分野のさまざまなテーマを扱います。

経営・IT教科

経営学の基礎から経営戦略、リスク管理、IT知識など、経営に関連した幅広い内容をカバーします。
デューデリジェンス(監査的調査)に関する知識もこの教科の一環です。

法規・職業倫理・その他の教科

公認会計士法や金融商品取引法、民法などの法規に焦点を当てた講義です。
ディスカッションによる職業倫理のほか、不動産の評価やビジネススキルなども含めて幅広く学習します。


これらを3年間のカリキュラムとして学習し、実務に必要な深い知識を習得していきます。
講師陣は監査法人の役職者が多く、実践に役立つ高水準な講義が展開されます。
実務補習は学校のようなイメージですが、ハイレベルなクラスメイトとの交流や議論を通じて、知識を高め合える貴重な場とも言えるでしょう。


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実務補習のスケジュール

ここでは、実務補習のスケジュールをまとめてみました。

年数 期間 カリキュラム全体のカバー率 受講頻度
1年目 12月~翌年10月 約70% 週に1~2回のペースで受講
2年目 11月~翌年10月 約20% 月に1回程度を想定
受講の負担は1年目に比べて大幅に軽減
3年目 11月~翌年10月 約10% 1~2回の出席で、eラーニングが主体
2年目と同様に負担は軽い

スケジュールとしては3年間を通じてカリキュラムを修了し、3年目の終わりに修了考査を受けることになります。
年数の経過とともに受講の負担は軽減され、2年目と3年目は出席回数が少なく、eラーニングの受講が主体です。

すでに実務経験が2年以上ある場合は、通常の3年間の修業年限を短縮できる制度もあります。
例えば、3年間の補習期間を2年間に、または1年間に短縮することも可能です。
なお、上記スケジュールは変更される場合があるため、実務補習所のウェブサイトを随時確認するようにしましょう。


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実務補習所と受講方法

実務補習所と受講方法

実務補習所一覧

実務補習所とは、公認会計士試験合格者が実務補習を受講するために通う場所です。

所在地は、東京・東海・近畿・九州の4地域にあります。
以下はそれぞれの場所の詳細です。

東京実務補習所
・日本公認会計士協会 公認会計士会館
・日本教育会館(一ツ橋ホール)
東京を拠点とする実務補習所では、公認会計士会館や一ツ橋ホールを使用して講義が行われます。

東海実務補習所
・日本公認会計士協会東海会 研修室
東海地域をカバーする研修室は、名古屋クロスコートタワーの11階です。

近畿実務補習所
・日本公認会計士協会近畿会 研修室
・大阪商工会議所
・天満研修センター
近畿地域を対象とした実務補習所は、複数の会場になります。

九州実務補習所
・日本公認会計士協会北部九州会 研修室
九州地域をカバーする実務補習所は、天神幸ビルの5階です。

さらに、札幌・仙台・長野・新潟・静岡・金沢・広島・高松の8地域に支所があります。

受講方法の種類

実務補習の受講方法は、補習所へ出向いて受講する通常講義(ライブ講義)と、eラーニング講義の2種類を主として、そのほかにも複数用意されています。
以下に、受講方法の種類を紹介します。

通常講義(ライブ講義)
補習所では対面でのリアルタイムな講義が行われますが、支所ではDVDによる講義が中心です。
講義の前後に「補習生カード」をQRリーダーに通すことで出欠が確認され、単位に反映されます。

eラーニング講義
インターネットを通じ、システムにログインして講義を視聴します。
視聴後の確認テストやアンケートの回答に基づいて単位が付与されます。

ディスカッション、ゼミナール
議題となるテーマを設定し、資料の分析や議論を通じて、発表を行う形式です。

合宿、工場見学
実地経験や連携を深めるため、1年目の前期と後期に実施されます。
合宿ではゲーム形式の課題や工場見学なども含まれます。


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実務補習の修了要件

公認会計士登録に必要な実務補習は、どのようなかたちで修了することができるのでしょうか。
最後に、修了要件をチェックしておきましょう。

3年間で270単位取得

公認会計士登録には、3年間で合計270単位の取得が必要です。
単位の取得数には、以下のように年ごとの最低取得単位が定められています。

1年目:180単位以上
2年目:40単位以上
3年目:20単位以上
ディスカッションとゼミナールにおいても、30単位以上が必要です。

修了考査の合格

必要な単位を取得した後、修了考査に合格することで、晴れて公認会計士として登録が可能となります。
修了考査の試験は2日間行われ、実務補習で学んだ監査、会計、税務、経営・IT、法規・職業倫理の科目から出題されます。
試験では、学習内容の理解度と、公認会計士としての実務的な能力や適性が問われます。

合格のボーダーラインは、全科目の合計得点が60%以上で、各科目の合計点が40%以上です。
合格率は70%前後と高めの傾向ですが、年によっては50%を下回ることもあり、気を緩めず、準備を十分に整えることが大切です。
日々の仕事が忙しくても計画的に有給休暇の取得を検討するなど、しっかりと対策を講じましょう。

修了考査に合格できなかった場合、公認会計士として登録することはできません。
ただし、修了考査は年に1度実施されており、受験期限もないため、何度でも受験することが可能です。


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まとめ

実務補習は、公認会計士の登録に向けた重要な最終ステップです。
この補習を通じて、実務での知識とスキルが磨かれ、会計の専門家としての実践力が養われます。
3年という過程は短くありませんが、身につけた理論と培った実務を結びつけることで、将来の仕事に活かすことができます。
公認会計士になる道は、いくつものハードルを乗り越える必要があるからこそ、挑戦しがいのあるキャリアと言えるでしょう。

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この記事を監修したキャリアアドバイザー

齊藤 仁美

大学卒業後、幸せに働く人を増やしたいという想いから新卒でMS-Japanに入社。
上場企業を中心とした求人開拓から管理部門全般のマッチングを行い、2021年1月より専門性の高いJ事業部に異動。
主に会計事務所、監査法人、社労士事務所の担当を持ちながら士業領域での転職を検討している方のカウンセリングから案件紹介を両面で行う。

会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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会計士の転職・キャリアに関するFAQ

監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。

具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。

転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。

キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。

ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?

一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。

監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。

事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。

40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。

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