2024年06月18日

監査法人卒業組の転職。専門性を取り戻せ!

公認会計士試験の制度改定、大量合格世代の誕生、そしてリーマンショック後のリストラ、今思えば、監査法人と公認会計士を取り巻く環境は景気の影響を大きく受けてきました。
そして現在、監査法人を辞めたOBの状況にも変化が起き始めています。

今回は監査法人卒業組の転職と題し、彼らの転職後の軌跡や直近の状況、そして彼らを待ち受ける転職市場からの評価などを現実的な観点でまとめてみました。

監査法人を辞めて一般企業に移ったが…

リーマンショック後、監査法人も深刻な経営状況の悪化に陥り、2010~2012年頃にかけて人員削減を行っています。特に大手監査法人に至っては希望退職制度を設け、その時期に監査法人を退社すれば割増退職金を支払うなど、人件費削減に向けて奔走していたように見受けられます。
その時に監査法人を辞めた方の新たな行先は、一般事業会社だったことも記憶に新しいのではないでしょうか。では、当時監査法人を辞めた公認会計士は一般企業でどのようなキャリアを築いてきたのでしょうか。

監査法人退社後、最も多かったのが上場企業の経理部門です。当時は景況感も優れず企業も保守的な経営スタンスだったことから、現在のようにM&Aや海外事業の強化などは少なく、決算の効率化やきたるIFRS基準の導入に向けた準備などが多かったようです。

因みに、当時は企業内会計士という言葉も浸透しておらず、企業に転職すること自体が珍しかったため、雇用側も公認会計士の扱いに慣れておらず、基本的には採用ポジション、年収提示などはその企業の規定に基づいて行われていたようです。
従って、今の市場では考えられないかもしれませんが、公認会計士であっても上場企業転職時に年収500万円前後というケースも珍しくなかったのです。

その後、経理職として専門性の高い業務を行うようになった方もいれば、何となく決算や開示資料作成をルーティンで行っている会計士も少なくありません。
また当然のことですが、一般企業は決して会計士の集団ではありませんので、「会計制度の変更や会計処理上の重要な論点などが出てきた際に、以前のように専門的な知識を活かしながら判断をすることも減ってしまった」という方も一定数存在するようです。

まさに“企業内会計士のキャリアが二極化している”と言えるのではないでしょうか。

会計士キャリアを相談する

公認会計士としての専門性を取り戻したい

監査法人を辞めて外部に転職したものの、公認会計士として専門性の高い業務に就けていないという方も少なくはないようです。
例えば、大手企業の経理部門に転職したまでは良いのですが、最初の配属はIFRSや連結会計などとは程遠い固定資産管理に配置されてしまった方、経営コンサルティング会社に会計コンサルタントとして転職したものの、実際にアサインされた案件はITメインの案件だった方、会計事務所に転職したものの記帳代行や税務申告が中心でありM&AやIPOなどのコンサルティング業務に関与することが出来なかった方、その他にも多数の類似ケースが存在します。

また、「一般事業会社では監査法人のように出張や外出も少なく、決まった時間に出社し、固定の席・同じメンバーでルーティン業務をこなす日々だった」「決まった作業が多い職場環境に飽きてしまった」といった理由で、残念ながら企業を後にする方も少なくはないようです。

いずれにしても、「自分の専門性が劣化してきている」「公認会計士としてのアイデンティティが失われそう」と感じている公認会計士の中に、沸々と疑問や不安が募ってきている状況があると言えるでしょう。

無料で会計士キャリア支援を申し込む

監査法人卒業組の転職、気になる市場からの評価は?

では、上記のように一度監査法人を辞めた人材は、転職市場からどのように見られるのでしょうか。実は、監査法人卒業組に対する市場からの評価が近年上がってきているようなのです。

その一例として、監査法人業界では出戻り組を歓迎する傾向が高まりつつあります。数年前であれば、「リストラ対象だった方」「割増退職金をもらって辞めてしまった方」という不本意なレッテルを貼られてしまった方も、現在はそのような見られ方をされなくなってきています。
事実、監査法人としては会計監査の実務経験者を最優先で採用したいという思惑がある一方、なかなか監査法人出身者を採用出来ないというジレンマがあります。
その結果、この数年間で会計監査の実務経験を持っていない企業内会計士を採用し、今までは積極的には採用してこなかったUSCPAにも意欲的にオファーを出すようになってきています。

また、上記状況に加え、結婚や出産を機に監査法人を退職した方にも、時短や業務委託など社員の家庭環境に配慮しながら、働き手重視の雇用にシフトをし始めています。
上記のように業界でも風向きが変わり始めていますので、既に会計監査の経験をしていた方は、監査法人からすれば羨望の眼差し、まずは面接をしたいターゲットとなっているのです。

ただ、「一旦は辞めた監査業界に戻るなんて考えられない」という方もいらっしゃることでしょう。そういった方にも市場からの引きは十分あるようです。
例えば、一般事業会社で経理、財務、内部監査などの経験があれば、更にハイクラスな企業に転職することも可能になりつつあります。

一般事業会社で働く=専門性が低いという訳ではなく、専門性の高いメンバーで遣り甲斐のある仕事を行える環境を探せば、公認会計士としてのアイデンティティを取り戻すことも難しいことではありません。

監査法人卒業組の未来は明るくなりつつありますので、このトレンドを利用しながらご自身のネクストキャリアを模索して見てはいかがでしょうか。

会計士TOPに戻る

この記事を監修したキャリアアドバイザー

佐藤 颯馬

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。

会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

あなたへのおすすめ求人

Manegyニュースランキング

マネジーでポイントを貯めて、
豪華商品に交換しよう!

詳しくはこちら

powered by Manegy

MS-Japanの転職サービスとは

MS-Japanは、公認会計士やUSCPAなどの有資格者や企業の管理部門に特化した転職エージェントです。
大手上場企業や監査法人、会計事務所(税理士法人)など、公認会計士の幅広いキャリアフィールドをカバーする求人をもとに、公認会計士専門のキャリアアドバイザーがあなたの転職をサポートします。
キャリアカウンセリングや応募書類の添削・作成サポート、面接対策など各種サービスを無料で受けることができるため、転職に不安がある公認会計士の方でも、スムーズに転職活動を進めることができます。

サービス紹介を見る

MS-Japanを利用した会計士の
転職成功事例

転職成功事例一覧を見る

会計士の転職・キャリアに関するFAQ

監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。

具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。

転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。

キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。

ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?

一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。

監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。

事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。

40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。

企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

転職FAQ一覧を見る

転職やキャリアの悩みを相談できる!

簡単まずは会員登録