公認会計士の就職難は再来するのか?

2017年11月17日、平成29年度の公認会計士試験合格発表がありました。合格者は昨年度より123名増加し1,231名となり、その大半はBig4監査法人に就職するのではないかと見られています。一昔前のように、公認会計士試験に受かっても就職先がない、といった就職氷河期の様相は微塵も感じられないこの頃ですが、この状態はいつまで続くのでしょうか。
今回の会計トピックスでは、監査法人業界が売り手市場に転じた背景を振り返るとともに、いつまで売り手市場が続くのかについても予想してみたいと思います。
公認会計士試験合格者の就職状況は絶好調
直近の3年間を見ると、新規の公認会計士試験合格者の就職状況は過去に類を見ない程好調だと言えます。特に、Big4監査法人の採用意欲は非常に高い状態が続いており、新規試験合格者に関しては、ほぼ青田買いの状態と言っても良いでしょう。また、準大手~中堅監査法人も常時人材の募集を行っており、新規試験合格者枠で採用が出来なかった分を中途採用で賄うという戦略を取っている状況です。したがって、現在の監査法人業界では、新規試験合格者=金の卵という認識になっていますので、公認会計士試験に合格すれば監査法人業界に就職することは難しくありません。このように売り手市場の状況であれば、就職のことは気にせず受験勉強に打ち込めるのではないでしょうか。
何故、売り手市場に転じたのか?
上記のように監査法人は圧倒的な売り手市場だと言えます。しかし、この状態は永年続くものなのでしょうか。その点について少し言及してみたいと思います。まず、現在のような超売り手市場になった背景には、リーマンショック後に監査法人が大規模なリストラを行っていたことが大きく影響しています。日本経済が低迷する中、クライアントからの監査報酬値下げの要求が相次いだこと、また上場維持コストを考えた際に非上場化するような企業も少なからずあったこと(監査契約の解除)、そして非監査業務の受注低下などが更に監査法人の収益を押し下げてしまったこと等、監査法人が経営難に陥ってしまったことで公認会計士のリストラを断行せざるを得なかったのです。要するに、数年前の監査法人は必要最低限の人数で業務を回していたことになります。
一方で、現在のように好景気に転じると、監査報酬の値上げ、非監査案件の受注増加などが自然と起こり、監査法人の経営は潤い始めます。そういった状況に加え、監査の厳格化がスタンダードになりつつある現在、現場の公認会計士にかかる負担(作業工数)も増加していますので、結果的に人材が足りなくなっているのです。従って、監査法人の人材不足が解消されるまでは、現在のような売り手市場が続くと考えられます。さて、本題に戻りますが、今後この売り手市場はいつまで続くのでしょうか。今後の見通しについて予測してみたいと思います。
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2020年までは現状維持、それ以降は黄色信号か?
監査法人の採用市場は2020年までは堅調に推移していくことが予測されます。但し、今までのように爆発的な採用市場にはならず、監査法人も欲しい人材を精査しながら“冷静に”拡大路線を歩んでいくでしょう。と言うのも、現在、監査法人も就労環境の改善に取り組み始めており、単調な作業に関しては監査補助者を雇用し、極力現場の公認会計士にかかる負担を軽減させようとしている点、また監査にAIを取り入れ、より効率的に監査が進むように業務改善を試みている点など、現場にかかっている負担をどのように減らすかという議論を行っているからです。こういった施策が功を奏し、公認会計士の外部流出を軽減できれば、自ずと法人内の人材不足も解消されるでしょう。
また、2020年の東京オリンピック実施までは各業界もオリンピック特需で潤うかもしれませんが、その後、日本経済が安定して伸びていく保証はありません。もしかしたら、オリンピック後の日本にそこまで投資する魅力がないと判断されれば、海外の投資家は早々に投資(事業)を引き上げるかもしれません。
監査法人の就職及び中途採用の市場は経済状況とリンクしているため、これから公認会計士試験を受験される方は、経済の動きや世の中の流れにもアンテナを張っておくと良いでしょう。


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会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

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