内部統制・監査対応に強い30代経理はなぜ採用ニーズが高いのか?(後編)

この記事は後編です。前編の記事はこちらをご確認ください。
前編では、内部統制・監査対応に強い30代経理がなぜ採用市場で高く評価されるのか、その背景と求められるスキルについて解説しました。
J-SOX対応やガバナンス強化の流れの中で、経理が担う役割が「チェック業務」から「統制設計・改善提案」へと進化している点を整理しています。
後編では、内部統制経験が転職市場でどのように評価されるのかを踏まえ、職務経歴書・面接での具体的なアピール方法や、実際のキャリアアップ事例を交えて解説します。
転職市場での評価ポイント
内部統制・監査対応の経験は、転職市場において非常に高い評価を得られます。
上場企業でのJ-SOX経験は即戦力として扱われ、「信頼性を担保できる人材」として希少価値が高いためです。
多くの企業が、不正リスクの増大やガバナンス強化の必要性から、内部統制に精通した人材を求めています。
特に、IPO準備中のベンチャー企業では、「ゼロからの仕組み構築」や「短期間で改善を実現」といった創意工夫が強く求められます。
この場合、例えば「規程類の整備」や「証跡保管ルールの設計」を主導したといったような経験があればそこをアピールすることで、上場企業での経験がなくとも即戦力として評価されます。
また、不正会計事件をきっかけに統制の再整備を進めている大手上場企業や、海外子会社の統制が課題となっているグローバル企業でも、内部統制の経験は不可欠なものとして認識されます。
このように、内部統制のスキルは、企業の規模やフェーズ、業界を問わず通用する普遍的な価値を持っています。
内部統制の経験は、単なる経理スキルだけでは代替が難しいため、転職市場における自身の「希少性」を高めます。
企業は、経験を通じて「この人材がいることで、財務報告の信頼性が守られる」という安心感を得られるため、他の候補者と比べて圧倒的に有利な立場に立てるのです。
職務経歴書・面接でのアピール方法
内部統制の経験を転職活動で最大限にアピールするためには、上述の通り具体的な実績を伝えることが不可欠です。
職務経歴書では統制改善の具体的な事例を明記し、面接では監査対応での調整経験を具体的に説明することが重要です。
職務経歴書には、単なる「内部統制体制の構築に貢献」といった抽象的な表現ではなく、「監査法人からA項目で指摘 → 改善策Bを立案 → 運用後、指摘件数がX件から0件へ」といった具体的な改善事例を記述しましょう。
これにより、どのような課題を解決できる人材なのかが明確になります。
また、面接では、質問の意図を汲み取ることが重要です。人事担当者は、主に人柄や調整力を見ています。
「他部署と意見が食い違ったとき、どう解決したか?」といった質問を通して、コミュニケーション能力を測ります。一方、現場責任者やCFO候補は、専門性や実行力を重視します。
「どのようにフローを再設計したか?」や「監査法人と意見が食い違ったとき、どのように対応したか?」といった質問で、具体的な対応能力を深く掘り下げてきます。
それぞれの質問意図に合わせて、強みを具体的に語ることで、より高い評価を得ることができます。
内部統制経験を活かした転職事例
内部統制の経験は、キャリアアップの強力な武器になります。
内部統制の専門性を深めることで、より責任あるポジションや、経営に近い部門へのキャリアアップを実現している事例が多いです。
たとえば、「内部統制改善を主導した経験が評価され、大手企業の内部統制責任者に転職」した事例があります。
この場合、前職で「子会社横断での統制ルール統一」や「システム導入時の統制要件定義」を主導し、改善を「経営判断に繋げる形」で提案できていたことが成功の秘訣でした。
また、「監査対応力が評価され、経営企画部門にキャリアアップ」した事例もあります。
この場合は、監査対応時に取締役会への説明補助を経験。単に資料を作るだけでなく、リスクの経営インパクトを数値で示す力を持っていたことが高く評価されました。
このように、内部統制の経験は、財務の信頼性を守るだけでなく、組織全体を俯瞰する視点を養うことができるため、経理以外のキャリアパスも切り開く可能性を秘めています。
まとめ|キャリアの安定性を高める力
最後に、内部統制・監査対応の経験がもたらすキャリアへの影響についてまとめます。
内部統制はキャリアに「安定性」と「信頼性」を付与する、極めて重要なスキルです。
これは、単に転職に有利というだけでなく、長期的なキャリアを支える土台となります。
不確実性が高まる現代において、企業は「信頼性の担保」を最優先課題の一つとしています。
内部統制の経験は、不正やリスクを防ぎ、企業の存続に貢献できるという、明確な価値を証明します。
30代は、経理としての実務経験に加え、統制や監査対応といった「+αのスキル」を身につけるのに最適な時期です。
この時期に、ITスキル(ERP、RPA導入など)やFP&A(予算管理・経営企画連携)といった「攻めの経理」領域のスキルを掛け合わせることで、市場価値は飛躍的に高まります。
「守りの統制」と「攻めの企画」の両輪を持つことで、経理担当者は単なる経理担当者から、企業の「信頼」を担う存在へとキャリアを深化させることができます。
今後も市場価値の高い経理として活躍するため、ぜひ一度、自身の今までの経験や今後目指すべき方向性について改めて整理してみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、現職(MS-Japan)へ入社。
入社後は、RA(リクルーティングアドバイザー)として100社以上を担当し、業界問わずスタッフクラス~管理職クラスまで幅広い中途採用支援に従事。
異動の機会をいただき、2021年4月からCA(キャリアアドバイザー)として、管理部門及び士業領域幅広い方の転職支援に従事しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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