【経理キャリアマップ】上場準備企業・スタートアップのCFOを目指すには?

近年、スタートアップや上場準備企業におけるCFOの役割はますます注目されています。
これらの企業はスピード感のある成長と同時に、財務やガバナンス面での基盤強化が不可欠です。
資金調達から内部統制、IPO準備、投資家対応まで、多岐にわたるミッションがCFOに求められます。
本記事では、スタートアップ~上場準備企業におけるCFOの役割や求められるスキルセット、キャリア形成ルート、採用企業が期待する人物像までを体系的に解説します。
企業フェーズごとのCFOの役割
CFOは財務戦略を担うだけでなく、経営パートナーとして企業価値の向上に貢献します。
特に急成長フェーズでは、変化への柔軟な対応力と実行力が不可欠です。
以下では、企業フェーズごとにCFOに求められる主なミッションとスキルを紹介します。
フェーズ | ミッション | スキル・経験 |
---|---|---|
シード期~ プレシリーズA |
・資金調達 ・経理の仕組み構築 |
・財務諸表作成 ・資本政策 ・キャッシュ管理 |
シリーズB~ 上場準備期 |
・IPO体制整備 ・監査法人、証券会社対応 |
・J-SOX理解 ・予算管理 ・内部統制構築 |
上場後 | ・投資家対応 ・経営の透明化 |
・IR対応 ・ガバナンス対応 ・決算早期化 |
成長企業 | ・財務戦略立案 ・事業ポートフォリオ管理 |
・中長期戦略 ・M&A/PMI経験 |
企業のステージにより、CFOが担う役割は変化します。
単なる「財務責任者」から、「経営陣の一角」へと進化する柔軟性が求められます。
上場準備企業・スタートアップのCFOへのキャリア
CFOを目指すには、明確なキャリア戦略が必要です。
以下では、上場準備企業・スタートアップのCFOへ至る代表的な3つのルートを紹介します。
管理部門(経理・財務など)で実務経験を積んでCFOへ
経理や財務など、管理部門の実務経験を積み上げてCFOへとキャリアを広げるルートです。
税務・会計・内部統制といった制度対応や社内体制の構築に強みがあり、プレシリーズA〜Bの早い段階から実務体制を整える役割を果たせるのが特徴です。
経理・財務に根差した知識をもとに、限られたリソースの中で組織基盤を固める力が評価されます。
一方で、投資家対応や資本市場とのコミュニケーション力は経験不足になりやすく、対外的な調整力を磨くことが今後の成長課題となります。
企業フェーズ | 適正 | 貢献 |
---|---|---|
プレシリーズA~A | ◎ | 実務体制整備で即戦力 |
B~上場準備期 | 〇 | 体制強化と連携面で貢献可能 |
上場直後以降 | △ | 投資家対応には経験補完が必要 |
成長企業フェーズ | 〇 | 中期戦略に向けた管理会計支援 |
監査法人出身の公認会計士からCFOへ
監査法人で培った会計・監査の専門性を武器にCFOを目指すルートです。
IPO実務や監査対応に即戦力として対応できる点が大きな強みであり、上場準備期の企業では特に重宝されます。
監査法人時代に得た内部統制や開示体制の知見を活かし、監査法人や証券会社とのやり取りを主導できる存在として期待されます。
一方で、事業部との連携や経営視点が不足しがちな点が課題であり、事業理解を深め、経営寄りの視点を補うことが求められます。
企業フェーズ | 適正 | 貢献 |
---|---|---|
プレシリーズA~A | △ | 内部統制理解を活かせるが柔軟性が課題 |
B~上場準備期 | ◎ | IPO準備・J-SOX・監査対応に即戦力 |
上場直後以降 | 〇 | 開示対応・監査連携などで強みを発揮 |
成長企業フェーズ | △ | 経営判断力や事業感覚が必要 |
金融機関(投資銀行・VC・PEなど)からCFOへ
投資銀行やベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ出身者がCFOを目指すルートです。
資本政策や資金調達、財務モデリングに強みを持ち、シリーズA〜C以降のファイナンス戦略やM&Aの推進で大きな力を発揮します。
資本市場とのネットワークや資金調達の実務経験は、成長フェーズの企業にとって非常に価値があります。
ただし、管理会計や経理実務への理解が浅いケースもあり、現場でのオペレーション力や組織マネジメントの経験を意識的に補うことが必要です。
企業フェーズ | 適正 | 貢献 |
---|---|---|
プレシリーズA~A | 〇 | 資金調達フェーズで強みを発揮 |
B~上場準備期 | ◎ | 資本政策・主幹事連携で活躍 |
上場直後以降 | 〇 | IR・資本市場との接点で貢献 |
成長企業フェーズ | ◎ | M&A戦略や資金循環で活躍 |
スタートアップ・上場準備企業のCFOに必要なスキル・経験
スタートアップにおいては、CFOは「何でも屋」としての柔軟性、実行力が求められることが少なくありません。
役割の明確な大企業と異なり、自ら手を動かす姿勢が必須です。
以下はCFO候補に求められるスキル・経験です。
- ・予算管理・予実分析(上場準備に限らず重要)
- ・資本政策の設計・実行(VC調達・増資対応など)
- ・IPO関連実務(実務経験者は即戦力)
- ・管理部門マネジメント(立ち上げ経験は高評価)
- ・監査法人・証券会社との折衝(IPOフェーズで重視)
- ・英語力(契約書や開示文書対応。グローバル企業では加点要素)
採用企業が求めるCFO像
CFOとして求められるのは「数字が読めるだけの人材」ではなく、経営の実務課題に入り込める戦略人材です。
以下のような人物像が高く評価される傾向にあります。
- ・監査法人や金融機関出身で事業会社経験もある人
→財務と事業の両面を理解できることが重要 - ・管理部門の立ち上げ経験者
→再現性のある成果を期待される - ・バックオフィス全般に広く対応できる人材
→限られたリソース下で重宝される - ・CEOと対等に議論できるCFO
→経営の意思決定に貢献できる存在
キャリア形成へのアドバイス
CFOを目指すには、自分の強みがどのフェーズで最も活きるのかを見極めることが重要です。
ここでは、キャリア形成の方向性を考えるうえで押さえておきたい4つのポイントを解説します。
自分の型を明確にする
まず、自分がどのタイプのCFOを目指すのかを明確にしましょう。
監査法人出身であれば会計や監査の専門性を強みとする「監査法人型CFO」、金融機関出身であればファイナンスや戦略に強い「金融型CFO」、そして経理や財務などの管理部門出身であれば実務構築力と業務推進力を武器とする「管理部門型CFO」といったように、それぞれに活躍できる場面があります。
企業フェーズとのマッチングを重視する
CFOの役割は、企業の成長段階によって大きく異なります。
プレシリーズA〜Bの段階では、自ら実務を担い組織の仕組みを整える「実務型CFO」が求められます。
上場直前のB〜上場準備期には、IPO体制を構築し監査対応をリードする「IPO対応型CFO」としての力が必要です。
そして上場後は、投資家対応や戦略的な財務運営を担う「戦略財務型CFO」としての活躍が期待されます。
CEOとの相性を意識する
スタートアップや上場準備企業では、CEOとの関係性が成果を左右します。
価値観を共有し、スピード感を持った意思決定に並走できるCFOは、経営陣から高く評価されます。
単なる数字の管理者にとどまらず、経営パートナーとして信頼関係を築くことが欠かせません。
足りないスキルを補う
最後に、自分のバックグラウンドで不足しやすいスキルを意識的に補うことが大切です。
経理出身者は資金調達やIR対応の経験を積む必要があり、金融機関出身者は現場の実務構築やマネジメント経験を強化することが求められます。
また監査法人出身者は、事業の実態を理解し投資家対応の経験を重ねることで、経営視点を磨いていくことが重要です。
まとめ
スタートアップや上場準備企業のCFOは、単なる財務担当ではなく、「経営の伴走者」としての役割が求められます。
成長フェーズに応じて、求められるスキルや立ち位置は大きく変わり、キャリア形成には明確な戦略とタイミングの見極めが不可欠です。
どのルートからCFOを目指すにしても、「フェーズを理解し、自分の強みを活かせる場所で実績を重ねること」が、理想のCFO像に近づくための一歩となるでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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