【経理キャリアマップ】上場企業の内部監査責任者を目指すには?

企業の信頼性を守り、不正やリスクを未然に防ぐ「内部監査」は、特に上場企業にとって欠かせない役割です。
近年では、経理で培った数字への洞察力や業務理解を強みとして、内部監査責任者へとキャリアを築く方も増えています。
一方で、経理から内部監査へ転身するには、これまでの経験をどう活かすかに加え、内部監査ならではのスキルやキャリア形成のステップを理解しておくことが重要です。
本記事では、経理から内部監査責任者を目指すキャリアパスや求められるスキル、そしてキャリア形成のポイントについて詳しく解説します。
内部監査(責任者)とは
内部監査は、企業のルールや仕組み(内部統制)が正しく機能しているかをチェック・評価する仕事です。
特に上場企業においては、法令順守や不正防止、経営の健全性を守るうえで欠かせない存在といえます。
内部監査の役割
内部監査の主な役割は、以下の5つに整理できます。
- ・内部統制の有効性と効率性の評価
- ・リスク管理体制のチェック
- ・経営目標の達成度の確認
- ・法令や社内ルールの順守状況の検証
- ・情報セキュリティやESG対応など、非財務リスクの確認
財務データを含む業務プロセスを横断的に点検し、改善提案を行うことで、企業の資産を守りつつ業務効率化にも貢献します。
また、潜在的なリスクを早期に発見して対応を促すことで、トラブルを未然に防ぎ、持続可能な成長を支える役割を担っています。
近年では、ESG(環境・社会・ガバナンス)やサステナビリティといった新たな観点でも内部監査の役割が注目されています。
例えば、社内通報制度が適切に機能しているか、現場でルールが守られているかなど、従来の財務・業務監査に加え、企業文化やガバナンス体制の健全性までチェック対象が広がっています。
内部監査責任者の影響力
内部監査責任者は、経営陣に近い立場で企業全体を俯瞰するポジションです。
単なる「チェック役」にとどまらず、経営戦略やリスク管理に対して実効性のある提言を行うことで、企業価値の向上に直接寄与します。
責任は大きいものの、その分やりがいも非常に大きく、経営層に並ぶキャリアステップの一つと位置づけられています。
経理から内部監査責任者へのキャリアパス
経理のキャリアには複数のルートがありますが、近年特に注目されているのが「内部監査責任者」への道です。
経理から内部監査へ転身し、監査担当者として経験を積んだ後、チームリーダーや内部監査室長を経て、最終的に責任者へと昇進するキャリアパスです。
経理から内部監査へ進むメリット
経理経験者が内部監査に転身するケースは非常に多く、キャリアマップ上でも代表的なルートの一つです。
経理業務を通じて、単なる数字の処理ではなく、取引や業務フロー全体を理解しているため、内部監査に必要な「業務の妥当性を見極める力」や「リスクを察知する感覚」を自然と身につけています。
内部監査の現場では、会計処理の正確性確認に加えて、業務プロセスの有効性や不正・非効率の兆候を発見することが求められます。
その点で、経理や財務のバックグラウンドを持つ人材は、帳簿上の数値と実務のズレを敏感に察知し、改善につなげられる点が大きな強みです。
特に「月次・年次決算」「予算策定・予実分析」「監査法人対応」といった経験は、内部監査の「会計監査」「業績評価」「経営管理プロセス」の監査対象領域に直結し、即戦力として評価されやすいポイントになります。
さらに、ガバナンスや内部統制の有効性が重視される今、経理経験者は「全社最適の視点で改善提案ができる監査人材」として大きな期待を集めています。
経理以外からのキャリアと比較
内部監査責任者へのキャリアは、経理以外からのルートもあります。
監査法人出身者 ⇒ 内部監査
王道ルートの一つが、監査法人での勤務経験を持つ公認会計士です。
法定監査や内部統制監査(J-SOX)に従事してきた人材は、財務報告や内部統制に関する体系的な知識と実務経験を兼ね備えているため、企業の内部監査部門でも即戦力として高く評価されます。
監査法人で培った「リスクベースで業務を分析する思考力」や「職業的懐疑心」「独立性」といった姿勢は、内部監査人として不可欠な資質です。
近年では経営戦略やリスクマネジメントに踏み込んだ“戦略的監査”や、海外子会社の監査などグローバル対応に携わるケースも増えており、監査法人出身者の活躍の幅は一層広がっています。
業務改善・内部統制対応の経験 ⇒ 内部監査
事業会社において業務改善や内部統制対応に携わってきた人材も、内部監査に強みを発揮できます。
製造業で生産管理や品質保証体制を整えてきた方、IT業界で情報システム統制(IT統制)を担ってきた方などは、現場目線のリスク評価や改善提案ができる貴重な存在です。
内部監査の現場では、監査対象部門とのヒアリングを通じて実態を把握し、制度的な観点と現場の事情をバランスよく踏まえた指摘が求められます。
こうした“現場を理解した監査”ができる人材は、単なるチェック役を超えて、建設的なアドバイザーとして高く評価されます。
未経験から資格取得 ⇒ 内部監査
一方で、未経験から内部監査を目指す場合は、関連資格の取得が大きな突破口になります。
代表的なのは国際的に認知度の高い「公認内部監査人(CIA)」や、不正調査の専門資格である「公認不正検査士(CFE)」です。
これらの資格で基礎知識を補うとともに、Excelやレポート作成といった基本的なビジネススキル、論理的思考力、関係者とのコミュニケーション力を備えておけば、実務への適応力を高めることができます。
これらの資格で基礎知識を補うとともに、Excelやレポート作成といった基本的なビジネススキル、論理的思考力、関係者とのコミュニケーション力を備えておけば、実務への適応力を高めることができます。
内部監査責任者に必要な経験・スキル
内部監査責任者は、経営層に近い立場から企業全体のリスク管理・ガバナンスを監督する役割を担います。
そのため、経理や監査の専門知識だけでなく、広い視野やマネジメント力、国際的な対応力も求められます。
ここでは、特に重視される経験やスキルを整理します。
内部監査の実務経験
内部監査責任者を目指すうえで最も重要なのは、監査実務の経験です。
内部監査は即戦力が期待されるポジションであり、経験が浅いと責任者候補に選ばれることは難しくなります。
従来は30代後半〜50代のベテラン層が中心でしたが、近年は30代前半でも早期に監査経験を積んだ人材が責任者候補として採用されるケースも増えています。
特に上場企業の内部監査部門での経験は転職市場で高く評価されます。
リスクベース監査の経験
J-SOX(日本版内部統制報告制度)の改正以降、単なる形式的チェックではなく「リスクを起点とした監査」が重視されています。
リスクベース監査を経験している人材は、リスクの優先順位づけや実効性ある改善提案ができるため、専門性の高い監査人材として評価されやすいです。
部門横断的な業務理解
内部監査の対象は経理や財務だけにとどまりません。
営業、製造、IT、人事、総務など企業全体の業務を横断的に理解し、各部門が抱えるリスクや課題を把握できる力が不可欠です。
複数部門を経験している人材や、経理に加えて管理部門全般を理解している人材は、監査責任者としての適性が高いといえるでしょう。
マネジメント経験や経営視点
内部監査責任者は、単なるチェック役ではなく経営陣に助言する役割を担います。
そのため、部門マネジメントの経験や、経営企画など経営に近い領域に関わった経験は大きな強みになります。
経営者と同じ目線で組織全体を評価・改善できることが求められます。
海外業務の経験や英語力
グローバル展開する企業では、海外子会社や現地拠点への監査も重要な業務の一つです。
そのため、海外出張や現地監査の経験、英語を用いたコミュニケーション力は高く評価されます。
特に英語での報告書作成や会議対応ができる人材は、国際的な監査に対応できる貴重な存在となります。
内部監査のその先に広がるキャリア
内部監査責任者はキャリアのゴールではありません。
その先には、さらに広がりのあるキャリアパスが存在します。
例えば、
- ・取締役会直属の 監査役(常勤・非常勤) として企業統治に直接関与
- ・リスク管理部門やガバナンス部門の統括責任者 へのステップアップ
- ・経営企画部門やCFO として経営に直結する役割を担う
- ・監査経験を活かし、コンサルティングファームや監査法人 に転身
- ・PO準備企業での 内部監査責任者 として活躍
などが挙げられます。
内部監査で培った「横断的な視点」「課題発見・改善力」は、どの業界・どの組織においても評価される資産です。
経理出身者がこれらのスキルを意識的に積み重ねていけば、監査部門にとどまらず、経営の中枢で活躍する道も大きく開かれるでしょう。
まとめ
内部監査責任者は、企業の透明性や信頼性を高め、安定した成長を支える重要な役割を担っています。
特に上場企業では、内部統制やガバナンスの強化が必須となっており、その中核を担う内部監査責任者の需要は今後も高まり続けるでしょう。
経理から内部監査へのキャリアチェンジは、数字に強く業務フローを理解している経理経験者にとって大きなチャンスです。
これまで培った実務経験を土台に、監査スキルやリスク感度、経営視点を磨くことで、経営に直結するポジションへとステップアップすることができます。
また、内部監査で培った横断的な視点や課題解決力は、その先のキャリアにも広く活かせる資産となります。
責任は大きいものの、その分やりがいも大きいポジションです。
自身のキャリアの選択肢を広げたい方は、内部監査責任者という道を真剣に検討してみる価値があるでしょう。
- #上場企業内部監査責任者
- #経理キャリアマップ
- #経理転職


この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学を卒業後、新卒で大手セレクトショップに入社。
MS-Japan入社後は、キャリアアドバイザーとして、管理部門職種未経験の方やスタッフクラス~ハイクラス・有資格者の方まで幅広い面談・転職支援に従事。
社内異動を経てリクルーティングアドバイザーとして、法人支援をメインとして担当企業への人材支援・求職者の方の転職支援まで、一気通貫で対応しておりましたが、この度、改めてキャリアアドバイザーとしてご支援をさせていただくこととなりました。国家資格キャリアコンサルタント(未登録)
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
あなたへのおすすめ求人
同じカテゴリの最新記事

【経理キャリアマップ】上場企業の経営企画責任者になるには?

会計事務所の転職理由【例文付】面接の注意点や失敗しない転職先選びのポイント

会計事務所に就職・転職するには?事務所選びや年収アップのポイントなど

公認内部監査人(CIA)とは?試験難易度や資格取得のメリット

会計事務所転職の失敗事例と対策。後悔しない転職をしよう!

税理士補助とは? 仕事内容や年収、求人情報、志望動機のポイントも解説

会計事務所が求める人材を事務所規模ごとに解説

令和7年度弁理士試験|最新合格率や試験日程、合格後の流れを解説!

管理部門の転職はなぜ難しい?成功のカギと未経験からの突破法を徹底解説
サイトメニュー

業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。
新着記事
求人を職種から探す
求人を地域から探す
セミナー・個別相談会

業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。