2025年10月01日

【経理キャリアマップ】上場企業・上場準備企業の監査役・社外取締役を目指すには?

経理として経験を重ね、経理責任者やCFOなどを担った先に、キャリアの集大成として選択肢に挙がるのが「監査役」「社外取締役」です。
企業のガバナンスや持続的成長を支える重要なポジションでありながら、日常業務では接点が少ないため、その具体的な役割や求められるスキル、就任までのステップは十分に知られていません。

本記事では、上場企業および上場準備企業における監査役・社外取締役の役割や業務内容、必要なスキル、キャリアパスの全体像をわかりやすく解説します。

監査役・社外取締役の役割と業務内容

まずは、監査役(常勤監査役・非常勤監査役)社外取締役それぞれの役割と業務内容について整理します。

常勤監査役

常勤監査役は、日々の業務を通じて企業の内部統制状況や取締役の職務執行を監視する役員です。
社内に常駐し、監査役会の中核としての役割を担います。
会計や法律、内部統制などの知識に加え、経営陣と対等に議論できるコミュニケーション能力が求められます。

主な業務内容は以下のとおりです。

取締役の職務執行の監査

経営判断や業務執行が法令・定款に違反していないか、企業価値を毀損する行動がないかを確認します。
具体的には、取締役会や経営会議への出席、稟議書や契約書の閲覧、部門責任者へのヒアリングなどを行います。

内部統制や内部監査との連携

J-SOX対応も含め、内部統制の整備・運用状況を監査し、内部監査部門や会計監査人と連携してリスクを早期に察知します。

監査役会への報告・議論

監査結果を監査役会で報告し、非常勤・社外監査役と情報共有しながら監査方針を協議します。

会計監査人との連携

監査法人との定期的なミーティングを通じて、会計上のリスクや懸念点を共有します。
これは「三様監査(内部監査・監査役・会計監査人)」の一角としても非常に重要です。

非常勤監査役

非常勤監査役とは、会社に常駐せず、必要なタイミングで会社の経営活動を監査する役員です。
社内に属さない「独立した外部の目」としての役割が重視されます。

公認会計士や税理士、弁護士、社会保険労務士などの有資格者や元経営者、役員経験者が対象となるケースが多くあります。

主な業務内容は以下のとおりです。

取締役会・重要会議への出席と監視

経営判断の妥当性や法令遵守の観点から取締役会に出席し、必要に応じて意見・助言を行います。

業務監査

取締役や執行役員の職務執行が適正に行われているかをチェックします。資料確認やヒアリングによる実態把握に努めます。

内部監査部門・会計監査人との連携

定期的な意見交換を通じて、社内統制の運用状況やリスクの所在を把握します。

株主総会対応

監査報告の実施やガバナンス体制の説明など、企業の信頼性を株主に示す役割を担います。

社外取締役

社外取締役とは、企業の取締役会に参加しながらも、日常的な業務執行には関与しない独立した立場の取締役です。
企業の元役員・社員でないこと、またグループ会社などの利害関係者でないことが条件とされています。

コーポレート・ガバナンス・コードにより、上場企業では2名以上の独立社外取締役の設置が求められています。
他の取締役や経営陣と建設的な議論ができ、かつ組織内の利害調整にも配慮できるバランス能力に優れ、経営的な視座を持ち合わせ、これまでの経験や知識を活かして適切な助言ができることが求められます。

主な業務内容は以下のとおりです。

経営監督機能

経営陣の意思決定に対し、客観的・中立的な立場から意見を述べ、チェック機能を果たします。

リスク管理と内部統制への助言

コンプライアンスやリスクマネジメントに関する助言を外部視点から行います。

企業価値向上への貢献

自身の専門分野に基づいた助言や戦略提言により、企業の中長期的な成長をサポートします。

社会的信頼の担保

独立した立場から企業の健全性を担保し、投資家や市場からの信頼を高める役割を果たします。

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監査役・社外取締役へのキャリアパス

監査役や社外取締役に至るキャリアには決まったルートがあるわけではなく、経営陣からの推薦人脈による紹介で就任するケースが多いのが特徴です。
ただし、上場準備企業では幅広いバックグラウンドからの登用が行われるケースもあります。

ここでは、経理からのキャリアパス2つと、その他からのキャリアパス2つを紹介します。

経理責任者 → 内部監査責任者 → 常勤監査役

経理責任者 → 内部監査責任者 → 常勤監査役

監査役への代表的なキャリアパスの一つが、経理責任者から内部監査責任者を経て、常勤監査役に就任するルートです。

経理責任者として会計・財務全体を把握した後、内部監査で業務全体のリスクや統制に関する知見を深めることで、監査役に求められるガバナンスやコンプライアンスの視点が養われます。

J-SOX対応やリスクマネジメントへの理解も備えているため、上場企業を中心に即戦力の監査役候補として高く評価される傾向にあります。

CFO → 監査役・社外取締役

CFO→監査役・社外取締役

CFOとして経営陣の一角を担い、財務戦略や資本政策、開示対応、内部統制の整備などに携わってきた方は、経営とガバナンスの両面に通じた人材として監査役・社外取締役への転身が期待されます。

特に上場企業や上場準備企業でのCFO経験者は、上場審査基準やJ-SOX対応への理解が深く、企業の成長フェーズに応じたリスクと統制の視点を持っている点が評価されます。
経営者に対する建設的な提言や、株主・投資家目線でのチェック機能を発揮できる存在として、企業からのニーズも高まっています。

監査法人出身の公認会計士 → 監査役・社外取締役

監査法人で会計監査やIPO支援に従事してきた公認会計士は、会計・開示の専門知識と独立した視点を併せ持つことから、監査役や社外取締役への登用が非常に多いルートの一つです。

特に上場企業や上場準備企業においては、J-SOX対応や適時開示、内部統制の整備が求められるため、外部監査の知見と規制対応の経験を備えた人材はガバナンス強化の観点から高く評価されます。
また、IPO支援の経験者は、未上場企業に対しても成長戦略や上場審査基準に沿った助言が可能であり、ベンチャー企業やスタートアップの社外取締役としてもニーズが高まっています。

専門領域の経験や知識を保有 → 社外取締役

法務、リスク管理、IT、サステナビリティ(ESG)など、特定領域の専門知識と実務経験を有する人材が社外取締役として起用されるケースも増えています。
社外取締役には経営の監督機能に加え、経営陣への提言や外部の視点を取り入れる役割が求められるため、専門的かつ独立した立場からの意見を述べられる人材は非常に重宝されます。

特に昨今は、デジタルガバナンス、ESG経営、内部統制の高度化など、経営課題が多様化・複雑化しており、経営経験に限らず専門領域の第一人者的な立場から経営に貢献できる人材へのニーズが高まっています。
上場企業における社外役員比率の引き上げが進む中、多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルの登用が進んでいます。

転職でキャリアアップをかなえる

監査役・社外取締役に必要な経験・スキル

監査役・社外取締役を目指す上で、特に評価される経験やスキルは以下の通りです。

  • ・高いコンプライアンス意識と法律知識
  • ・経営陣との対等なコミュニケーション能力
  • ・IPOや上場企業の開示・ガバナンス知識
  • ・会計・内部統制・リスク管理に関する理解
  • ・経営戦略や事業に関する幅広い知識

※会計士・弁護士・税理士などの有資格者であれば、独立性の観点で評価されやすいです。

常勤・非常勤監査役には、特に会計・法律分野の専門知識が求められ、社外取締役には、会計・法律に加え、経営、テクノロジー、ESGなどの分野での経験や実務知識が重視されます。

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キャリア形成のアドバイス

監査役や社外取締役の就任は、一般的な求人のように公募で募集されるケースはほとんどなく、多くは経営陣からの指名や推薦によって決まります。
そのため、まずは上場準備企業で経験を積むことが現実的な第一歩となるでしょう。

上場準備企業では、スケジュールや上場審査対応の都合上、採用対象を比較的幅広く設定することが多く、公認会計士や弁護士といった有資格者はもちろん、内部監査や経営管理の経験を持つ人材も選ばれる傾向があります。

一度でも監査役や社外取締役としての経験を積むことができれば、その実績は大きな強みとなり、次の登用につながりやすくなります。
特に上場企業の役職は実績や信頼が重視されるため、最初のキャリアステップをどこで踏むかが非常に重要です。

また、日頃から経営層や士業とのつながりを意識的に広げておくことも欠かせません。
ネットワークを築くことで新たな紹介や推薦を受けやすくなり、キャリア形成の可能性を大きく広げることができます。

転職でキャリアアップをかなえる

まとめ

監査役や社外取締役は、企業のガバナンスを担い、持続的成長を支える重要な役割を果たします。
上場企業では特に実績や信頼が重視されるため、まずは上場準備企業での経験をキャリアの入り口にするのが有効です。

法務・会計・内部統制といった専門性に加え、経営的な視座と客観的な判断力が求められます。
将来的にこれらのポジションを目指す方は、自身の専門性と貢献ポイントを整理し、経験とネットワークを積み上げていくことが成功への近道となるでしょう。

  • #監査役
  • #社外取締役
  • #経理キャリアマップ

この記事を監修したキャリアアドバイザー

柴 優太朗

大学卒業後、現職(MS-Japan)へ入社。
入社後は、RA(リクルーティングアドバイザー)として100社以上を担当し、業界問わずスタッフクラス~管理職クラスまで幅広い中途採用支援に従事。
異動の機会をいただき、2021年4月からCA(キャリアアドバイザー)として、管理部門及び士業領域幅広い方の転職支援に従事しています。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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